センター試験の真髄

エミは友達のパットからコンピュータ・ゲームを借りている。今日、初めてそれを試してみる。

エミ:ああもう、また失敗。最後の命になっちゃった。もうこの第4ステージをクリアする見込みはないわ!

パット:どうしたのさ、エミ?

エミ:第五ステージにたどり着けないの。

パット:そりゃ残念。一休みすれば、いくつかのコツを教えてやるよ。

態度でかいな

エミ:わかった。

パット:どこまで行った?

エミ:ええちょっと待って…最初の穴から出てきたときにキノコを踏んじゃいけないのはわかってるんだけど。

パット:そう。それから、どんぐりにも気をつけないといけない。

エミ:木から落ちてくるあのちっちゃいやつのこと?

とてもどんぐりには見えないグラフィック

パット:そうそう。アレにあたると死ぬんだ。

どんぐり強すぎる

エミ:じゃ、キノコもどんぐりも避けないといけないの?

パット:まあ、場合にもよるけど。ほら、キノコが落ちてくるどんぐりに当たるまで待っていれば、二、三秒隙ができて、木を通過できるから。赤く光るのに気づいた?

エミ:光ですって?

パット:ほら、どんぐりとキノコの色が突然変わって、明るくなるでしょ。

エミ;どんぐりが当たったすぐ後に?

パット:うん。そのときこそ、木の前に回りこむチャンスなのさ。

エミ:木の後ろじゃなくって?

パット:ああ、後ろは危険すぎる。リスが木の幹から走り降りてくるだろ?

エミ:ええ。

パット:それに、スズメバチの巣が枝から垂れ下がっているだろ?

エミ:ええ。

パット:で、そのどっちかにでも触っちゃうと、そこでゲームが終わるから。

難しすぎる

エミ:なるほど。じゃ、頭を低くして、スズメバチの巣の前にいて、窓をくぐり抜ければいいの?

ふんふん

パット:ホントはそれも違う。家が罠になってるから。どうすればいいかっていうと、はしごを途中まで登って、そこから手を伸ばしてペンキの缶を掴むのさ。

違うのかよ

エミ:瓶はどうするの?

パット:それも罠。動かしたら、窓が頭上から落ちてくる。

エミ:で、どうやれば第五ステージに行けるの?

パット:ああ、そこがミソなんだ。缶からハケを取って、来た道を戻って、キノコとスズメバチの巣の間でひざまずくんだ。

エミ:木の根元で?

パット:その通り。それから、刷毛で木の幹に触れると、ドアが現れる。


ほほぅ

エミ:木にドアを書くってこと?うわぁ、魔法ね。早速やってみなくっちゃ!

衝撃の新事実。

このゲームはアクションではなくRPGだった!

設問:正しいものを選べ。
①エミはリスより先にどんぐりにたどり着かなくてはならない

②エミは落ちてくるどんぐりに気をつけなければならない

③エミは落ちてくるどんぐりをキャッチなければならない。

④エミはどんぐりが画面に登場するのを待たなければならない。


…この選択肢で注意すべき点はただ一つ。「主語がエミ」であることだ。

ゲームをプレイしているのがエミ」であって「ゲームの主人公がエミ」ではない。

この選択肢から判断するにこのアクション魔法ドア描きRPGバーチャルリアリティの可能性がある!

つまりこの場面のエミとパットは仮想現実空間でチャットによる攻略情報の交換をしているわけだ。たとえば酒場とかで。

画期的!画期的すぎる!オンラインプレイの上にバーチャルリアリティセンター試験での出題とくれば日本はこのシステムを開発している可能性が強い。しかもこの問題、2000年の出題なのだ。そろそろ実用段階だろう。こうして日本はバーチャルリアリティを使った高度なネットによる社会へと変貌し、現実世界は食事や睡眠といった必要最低限のことをやるモノになるのだろう。この問題はもしかしたらセンター試験を作る人たちからの我々受験生への警告かもしれない。